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総合型地域スポーツクラブに関するお知らせ

総合型クラブ2008/03/21

メルマガ(第30号)連携ニュース 長期継続クラブにみるマネジメントの工夫

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  長期継続クラブにみるマネジメントの工夫
~「ピュアSC」における「パートナーシップ」、ピュアスポーツクラブの場合(その2)~

◆  はじめに
  前稿では、-経営資源としての「文化」と「マネジメント」の関係-と題して、まとめさせていただきました。今回は、前稿をふまえて、「ピュアSC」のマネジメントに重要な位置を占める「パートナーシップ」について触れていきたいと思います。
  さて、第二の公共性ともいわれるNPO法人にとって「パートナーシップ」は絶対不可欠のものであることはいうまでもありません。「パートナーシップ」とは、日本語では「協力関係」と置き換えられるように、非常に曖昧で幅の広い概念であるともいえるでしょう。しかし、「パートナーシップ」を経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報・文化」との関係から捉えていくとその輪郭ははっきりとしてきます。さらに、ごく単純に、「パートナーシップ」とは主体(経営主体)と客体(協力相手)との関係であると考えていくと、その姿はより明瞭になってきます。また、客体(協力相手)については、個人・民間企業・公益法人・行政などに分類してみるとわかりやすくなります。本来であれば図示すると良いのですが、正三角形の頂点Aに経営主体、頂点Bに協力相手、Cに経営資源を置いて、その上の正三角錐の頂上に事業(商品)を配置することで「パートナーシップ」の全体像を見ることができそうです。本稿では、このような全体像を見渡すアイディアを示しつつ、「ピュアSC」における「パートナーシップ」について紹介します。

◆  スポンサーの獲得  ~「情報」の発信を糸口に~
  ここでは、「パートナーシップ」の一形態で、民間企業が主たる客体(協力相手)となる「スポンサーシップ」について、とりわけ「情報」という切り口で考えてみます。「ピュアSC」ではクラブ創設とともに「スポンサーシップ」(制度)を明文化しました。現在は、それを、理念や活動内容とともにホームページ上に掲載してあります。このこと自体、実効性があるのかといえば、ほとんどありませんが、「パートナー」を常に求めているクラブの姿勢を知ってもらうことこそがきわめて重要であると考えているからです。
  さて、「ピュアSC」の「スポンサーシップ」のカテゴリーは、「オフィシャルスポンサー・オフィシャルサプライヤー・オフィシャルパートナー」に分けられます。現在、正式に覚書を交わしている企業はスポンサー1社、サプライヤー2社、パートナー3社となっています。「スポンサー」の獲得には、事業展開での関わりを接点として、主体から客体への日常的かつフレンドリーな働きかけが大切です。
  しかしそれだけではなく、他の方法と組み合わせ(仕掛け)が必要なのです。会員募集の新聞折込チラシは1枚3円かかるなど、クラブの(公益的な活動の)広告には大きなコストがかかるものですが、安価なFAX代のみで済む新聞社・放送局など報道メディアへの直接的な情報リリースで広報活動をこまめに行うことはさまざまな効果を生み出します。これこそが、いわゆる「パブリシティー」を有効に活用するということであり、クラブ自体の存在を社会に露出させ、スポンサーなどへの認知度をここでも高めようという戦略なのです。

◆  パートナーシップの類型と機能
  「スポンサーシップ」は理念共有を前提として、活動への肯定的評価で成り立ち、「スポンサー」は「協働」の「パートナー」でもあります。「ピュアSC」の「スポンサーシップ」制度では、「オフィシャルスポンサー」は寄付金・「カネ」という形での資金提供を、「オフィシャルサプライヤー」は「カネ」ではなくクラブに必要な「モノ」を調達・提供してくれます。一般的に「スポンサーシップ」の本質機能はまず「カネ・モノ」資源の調達ですが、「オフィシャルパートナー」は本質機能を持たずに(もたなくなった後に)「協力関係」を結んでいる(結び続ける)「パートナー」を指しています。
  さて、このように「スポンサー」は主として「カネ・モノ」資源を提供してくれる「パートナー」と位置づけられますが、「ヒト」資源を提供してくれる「パートナー」は「ボランティア」です。「ボランティア」は「トキ」という経済的価値の提供主体であるといえます。「スポンサー」や「ボランティア」の獲得を積極的に進めることは「マネジメント」には不可欠なのです。

◆  パートナーシップの拡大  ~求めることと求められること~
  本稿では、最初に、「パートナーシップ」(協力関係)における客体(協力相手)を、個人・民間企業・公益法人・行政に分類してみました。残念ながら、今回は、「協働」という側面(意識)が強いとおもわれる公益法人・行政との関係までは詳しく触れることができませんでしたが、その一端を、最後に紹介させていただきます。「ピュアSC」では昨年度、(財)健康・体力づくり事業財団より「シニア体力アップステーション(文部科学省補助)事業」というものを受託し、6ヶ月間にわたり継続的な事業を展開しました。限られた運営補助(委託)金でこの事業を行うには大きな力が必要となりました。気概や勇気を持って困難な事業にチャレンジするためには、「パートナー」である「ボランティア」の力づけが大きいものです。おかげさまで、平成19年度体力つくり優秀組織表彰(全国で22の団体・組織)の栄誉を、NPOとして唯一いただくことができ、それは大きな誇り・財産となりました。静岡県の組織・団体がこの賞を受賞するのは十数年ぶりとのことです。
  しかしながら、このような大きな事業でなく、逆に協力を求められた小さな事業を積極的に受け入れていくことも重要です。例えば、静岡県総合教育センターの学習人材バンクへ「ピュアSC」を登録することによって、講師派遣依頼が届くこともあります。今春には、公立中学の特別授業の講師派遣という、新たな事業を担当することになりました。日常の幅広いネットワーク作りによって、また、求めることだけでなく求められることによって、「パートナーシップ」はより拡大していくことになります。

◆  本稿のまとめ
1)NPO法人にとって「パートナーシップ」は絶対不可欠のものである。「パートナーシップ」とは、日本語では「協力関係」と置き換えられる。
2)「パートナーシップ」とは、単純には、主体(経営主体)と客体(協力相手)との関係であるが、経営主体・協力相手・経営資源と事業(商品)との関係により全体像が示される。  
3)「パートナーシップ」における客体(協力相手)は、個人・民間企業・公益法人・行政などに分類できるが、それは「スポンサー」、「ボランティア」としてだけでなく、「協働」のパートナーである。
4)「パートナーシップ」の本質機能は「カネ・モノ・ヒト」資源の獲得で、それによって自らがめざす事業が支えられる。「パートナー」の獲得には「情報・文化」資源を有効に活用すること、それがよりよい「マネジメント」につながる。
5)日常の幅広いネットワーク作りによって、また、求めることだけでなく求められることによって、「パートナーシップ」はより拡大していく。

(松井恒二  静岡大学教育学部生涯教育課程・生涯スポーツ専攻教授、NPO法人ピュアスポーツクラブ理事長)