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総合型地域スポーツクラブに関するお知らせ

総合型クラブ2008/01/22

メルマガ(第28号)連携ニュース 「失敗に学ぶケース・スタディ」 ~会費値上げで会員が激減してしまいました~

※本ニュースは本日配信の「総合型地域スポーツクラブ公式メールマガジン第28号」と連携した内容となっております。
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【質問】
2年前に立ち上げ、現在3年目の総合型クラブです。2年間は、委託金や補助金を活用してやってきました。それらが有期限であることはわかっていたのですが、会員をより多く集めるために、会費を安く抑えました。
公的資金がなくなると、指導者謝金が払えなくなり、イベント開催に関わる経費もかかるので、会費を値上げせざるを得なくなりました。案の上、会費改定した今年は、会員の更新率が半減しています。
新しい会員を集める広報費も人件費もなく、このままでは会員が減る一方です。どうしたらいいでしょうか?

【ケースの考え方】
基本的な考え方は、途中で会費の値上げをしないように、当初から会費の設定をするように考えることがまず重要です。やむを得ず会費の値上げをする場合は、会員が納得する説明が必要不可欠です。年会費を値下げすることで会員総数を増やし結果的に収入アップになった例や、自治会助成をクラブの資金にした例もあります。地域特性とクラブの存在を見極め、会費が取りにくい地域やクラブであれば、とれる範囲でのクラブ運営を考えてみてください。

●先を見越してコストを積み上げて、算出する
  会費の値上げは会員の減少要因にもなるので、なるべく値上げをしないように当初から設定する必要があります。そのためには、地域人口規模から会員が何人入るかなどを想定します。地域性や広報活動などの違いもあり一概に言えませんが、会員数の想定は、地域人口の数%などの算出基礎もあります。自分達の地域と同様の人口規模や地域特性のある他のクラブで何人くらいの会員・参加者を集めているか、それを一つの目安にすることもできるでしょう。
  事業・プログラムの本数や定員数から何人の会員や参加人数が見込めるか、積み上げることもできます。会員や参加者が集まるプログラムの裏付けがあって初めて人も集まりますので、対象となる属性別にきめ細かく人数を想定して積み上げてください。こうして、それらの事業・プログラムにかかる経費を算出し、会費や事業収入に対して、支出を引いて赤字にならないように会費や参加費を設定します。できれば支出を引いたのちに、今後の活動を充実していくうえでの余剰金もあるのが理想です。収入は少なめに、支出は多めに見積もります。シミュレーションできるワークシートがありますので、参考にしてください(関連リンク1)。

●実現可能な「想定」を設定するには
  実際、想定した会員数や参加者が本当に集まるのかという不安はあるでしょう。これはどんな事業にも言えることですが、「絶対来る」という100%の確証がもてることはありません。しかし、それでは収支の見込みが立ちにくいので、確証に近づける方法を考えてみましょう。
  ひとつは、アンケート調査が可能であれば、ある程度クラブの中身が決まった段階で、クラブの目的や具体的なプログラムなどを提示して、参加してみたいと思うかどうか周辺住民に参加意向を聞いてみることです。ただし、「会員になりたい」「参加してみたい」に○がついてきても、必ず来るとは限らないので、割り引いた数字を目標にして設定します。また、本格始動前に、プログラム体験など小イベントを企画し、どの位の参加者が集まるのか反応をみることです。人の集まりが悪かったり反応が鈍かったりしたら、プログラムとして本格的に採用するのは控えましょう。指導者にも、人が集まらないと謝金は払えないことを事前に理解してもらいます。クラブ設立後、新しいプログラムを導入する際にも使える方法です。
  もちろん、クラブとして、赤字でも「実施する必要がある」と考えるものもあるでしょう。その赤字をどこで埋めるか対策を講じておく必要はあります。

●会費改定が必要な場合、会員の理解をどう得るか
  会費を値上げしたクラブのほとんどで、直後に会員が減っています。ただし、直後に減っても、その後、元通りに増えていくクラブもあります。この違いは、いったい何でしょうか。
  ひとつは、改定の際に、会員にどのように理解してもらうか考え、納得してもらえる説明をしたかどうかがです。NPO法人おやべスポーツクラブ(富山県)では、設立後5年間で2回の年会費改定をしました。クラブ員一人当たりにかかる経費を明らかにすることで、理解を得ることに成功しました(関連リンク2)。
  また会費値上げに見合った価値ある中身を用意できたか(姿勢も含めて)が重要です。これは、会費が単にニーズに合った「サービスの対価」にとどまらず、クラブの存在自体が社会や地域に有効であるという「社会的価値」も含みます。さらに会費改定を一律にするのではなく、子どもや障がい者、低所得者などには据え置くなど、メリハリをつけて改定するなどの工夫も考えられます。

●地域性に合った柔軟な発想で
  年会費と活動費を分け、年会費をあえて値下げすることで会員総数を増やし、結果的に収入アップになった例もあります。また、自治会助成をクラブの資金にした例もあります。地域特性とクラブの存在意義を見極め、会費が取りにくい地域であれば、とれる範囲での会費設定とその他の収入源を工夫することも考えられます。支出に占める割合の高い指導者謝金を、クラブや地域で使えるポイント・地域通貨(関連リンク3)などで充当して、現金の支出を抑えることも考えられます。地域性に合った柔軟な発想で会費を設定することが大事です。