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総合型地域スポーツクラブに関するお知らせ

総合型クラブ2007/09/20

メルマガ(第24号)連携ニュース 長期継続クラブに見るマネジメントの工夫  ~自立した経営のために、webスポーツクラブ21西国分(福岡県久留米市)の場合~

※本ニュースは本日配信の「総合型地域スポーツクラブ公式メールマガジン第24号」と連携した内容となっております。
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  日本における長寿企業(創業100年以上の企業)は1万5000社、個人商店や小規模な会社も入れると、10万社以上の老舗があり、日本は世界でもまれな「長寿企業大国」なのだそうです。

「なぜ、日本ではこんなに企業が長生きするのか?」、研究調査によれば4つの共通した特徴があるそうです。
(1) 決して「本業」をはずれないこと
(2) 環境の変化に対して敏感であり、世の中が変わったら「本業」からはずれない中で、社会のニーズに
      合わせていくこと
(3) 組織全体の健康状態を大切にする経営者に経営をゆだね、組織に強い結束力があり、現場の人々の判
      断を大切にしていること
(4) 資金調達に関して保守的で質素倹約を旨としていること

  今回は、2002年2月に設立された「NPO法人webスポーツクラブ21西国分」をとりあげます。既存のクラブ支援と新たなスポーツ人口増加を健康の視点も含めて目指しながら、地域のスポーツ拠点になることを使命とするクラブです。地区人口は1万5000人、会員数は約600人です。

  クラブマネジャー、桜木英一氏からのインタビューを元に、上記4つの視点から「クラブの自立と継続」についてまとめてみたいと思います。ダイナミックなマネジメント論がもてはやされる昨今ではありますが、地味でもしたたかに、社会に合わせて、細く長く経営を続ける息の長い組織から、クラブ経営のヒントが見つけられれば幸いです。

(1) 決して「本業」をはずれないこと
  桜木氏曰く、「正直にいうとあれもこれもでは、クラブの顔が見えてこないですよね。地域の人にはわからない。結局『総合型地域スポーツクラブっちゃ一体、何しようとね?(九州弁)』という声が少なくありません。地域に説明をするには、クラブのカラーがいります。クラブが果たすべき役割は何なのか、その成果を一つ一つ出していったときに、結果として『いつでも・どこでも…』となるんだと思います。設立から数年経ちますが、私たちのクラブのカラーを、まずはしっかりと確立しなければと考えています。」
地域に沿った理念と事業をしっかり確立することが、まずは大切なようです。

(2)環境の変化に対して敏感であり、世の中が変わったら「本業」からはずれない中で、社会のニーズに
    合わせていくこと
  「地域の保健室を作りたい。学校に行けば保健室があって、そこは単なる身体の不調を解決する場所ではなく、ときに子どもたちが先生以外に相談できる人がいたり、拠り所であったり、先生方のリラクゼーションの場であったり、という機能がある。いまの地域はそういう機能がどんどんなくなってきているんじゃないですか?地域コミュニティの崩壊や、メタボリックシンドロームに介護予防といった健康問題、そういう社会ニーズに応えられるのは、スポーツであり、クラブであり、それがスポーツの価値であり、クラブの魅力になるでしょう。」と、桜木氏は言いました。
そのクラブにしかできない地域での機能を確立し、その機能を活用できる新しい分野を地域において的確に探し出し続けること、これがクラブマネジャーには求められるということでしょう。

(3) 組織全体の健康状態を大切にする経営者に経営をゆだね、組織に強い結束力があり、現場の人々の
      判断を大切にしていること
  桜木氏のクラブマネジャーという職務に対する思いは、個人的なやりがいというものが発端にありながらも、それ以上に地域に対する思い、そこから出てくるクラブ組織の「和」の大切さというものがヒシヒシと感じられます。ときにクラブ以外の地域団体(既存のスポーツ団体や公民館、行政など)との付き合いで、意見の相違や認識の違いなど、衝突することはあっても、地域のために現場で気長に付き合い続ける努力、そういった姿勢が見受けられます。
そういうクラブマネジャーだからこそ、クラブ側も絶大な信頼を置き、さらに組織としての強い結束力がでてくるのでしょう。長寿企業においては「どんな経営理論よりも、『執念』ともいうべき不屈の精神が重要な役割を果たしている時期がある」という分析もあります。桜木さんは現在、この役割を充分に果たしているといえそうです。

(4) 資金調達に関して保守的で質素倹約を旨としていること
  昨今の企業活動においては、本業を外れ、お金を第一義に追いかけ始めた途端、不祥事を起こし、消費者の信頼を失うという事例が往々にして起こっています。ここはクラブも学ぶべきです。
桜木氏は「お金がない、というのは分かり切っていること。そこから、次の発想ができるかどうか。お金がないからと言って何もできない訳じゃない。お金がなくてもできること、地域のためにやるべきことはたくさんある。そこに集中できるかどうか。その課程においてNPO法人や指定管理者の活用もありますが、それは単なる道具に過ぎません。本業からはずれ、道具に振り回されるクラブでは元も子もありませんからね。受益者負担は当たり前のことなのに、それが当たり前になっていない。それを当たり前にするクラブの価値観づくり、そのためにやるべきことと、できることを地に足をつけてやることでしょうね。」と言っていました。

<まとめ>
  継続の秘訣とは結論から言えば「やめないこと」です。そういう意味では、クラブの本当の成功とは、創業者の思いが次の世代に受け継がれていくことなのかもしれません。クラブで日々培ったノウハウを、次世代に引き継ぐ教育体系を構築していくことは、将来展望として視野に入れておく必要があるでしょう。翻って、クラブの本業とは「スポーツを通じて地域で人を育てること」これに尽きるのかもしれません。
  そして地域で育った人材が、本当の意味で経営をするとき「自立」が見えてくるのだと思います。
桜木氏は、そこをひたすらに見つめているようです。
(内田 満    NPO法人スポーツウエイヴ代表/福岡県クラブ育成アドバイザー)