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総合型地域スポーツクラブに関するお知らせ

総合型クラブ2007/08/20

メルマガ(第23号)連携ニュース 「失敗に学ぶケース・スタディ」 ~過疎化が進む地域で、設立の話し合いが進みません~

※本ニュースは本日配信の「総合型地域スポーツクラブ公式メールマガジン第23号」と連携した内容となっております。
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【質問】
人口が少なく過疎化が進み、若者も少なく高齢化率の高い地域です。総合型地域スポーツクラブ(以下、総合型クラブ)設立に向けて、既存スポーツ団体を中心に集まり話し合いを始めていますが、理念は賛成でも、具体的な話になるとまとまらず先に進みません。「そもそも新しい団体が必要なのか」と懐疑的ですし、「何かあったら誰が責任をとるのか」など戦々恐々としているのが本音です。
視察にも行ってみましたが、なかなか前向きな気持ちなれず、話が堂々めぐりです。リーダー的立場の人もどちらかと言えば逃げ腰です。このままでは設立できそうにありません。どうしたらいいでしょうか?

【ケースの考え方】
「地域コミュニティの再生」と「豊かなスポーツライフの創造」を目的とする「総合型クラブ」の理念は受け入れられますが、それを地域で具現化しようとしたとき、今回のようなケースが見受けられます。「現実に今スポーツができているし、今の状態でいい」と思っている関係者の中からは、「新しい団体が必要なのか」と懐疑的な意見がでやすいことも事実です。
しかし、将来にわたり現在のしくみで地域のスポーツ環境が維持できるのかを念頭におき、10年後、20年後を考えたときにクラブが必要かどうか長期的な視野で考えなければなりません。「なぜクラブをつくるのか?」をもう一度考えてみましょう。住民から必要とされるクラブでなければ、総合型クラブを設立させる意味はないのです。

●地域課題を知ることからスタートしましょう!
新しい枠組みの再生を求められる『「総合型地域スポーツクラブ」づくりは、変革型の運動といえます。運動の趣旨を広く浸透させるためには「不満」が必要だ』(筑波大学  清水紀宏氏講演より)といいます。
今回のケースにあるようなスポーツ関係者には、クラブづくりを自分のこととして積極的にかかわりあいをもとうとしていないところが見受けられます。現状に満足しているスポーツ関係者では、「不満」から湧き出す、変革型の運動に積極的に参加しようとしないのも自然な流れかもしれません。
しかし、「不満」は、地域のことをよく考え、学習しないと生まれてきません。

今回のような過疎化や少子高齢化が進む地域でのクラブづくりは、スポーツ分野のみならず地域にどんな社会的課題・生活課題があるのか、また将来どのような問題が起こる可能性があるのかを知ることから始まります。
そして、その課題点を共有化し、将来を見据えてどのようなクラブをつくるのか、それぞれの夢の共有化を図っていき、地域にあった仕組みづくりを考えていきます。総合型クラブは、新たなクラブの誕生ではなく、新たな仕組み、枠組みづくりとなるのです。地域の課題を解決できるクラブであるからこそ、住民から必要とされるクラブとなるのです。                                                    

●地域課題を知るためには何をすればいいの?
地域課題の現状の把握には、さまざまな方法がありますが、まずは人や組織に注目し、関係者を分析してみましょう。今回のケースでは、既存スポーツ関係者を中心にクラブ設立を進めていますが、「総合型クラブ」では、スポーツ関係者以外の人の協力も重要です。
まず、対象となる地域住民、関連するグループ、関わる組織・機関の分析を通じて、その地域の問題、課題など現状を把握します。具体的には、関わる人や組織をあげていき、どのように関わるかを議論していきます。それぞれの関係者について、知っていること、知りたいこと(知る必要のあること)について洗い出し、グループの特徴、抱えている問題、関心事、弱点等、クラブづくりと関係がありそうな事柄について、項目をあげて整理していきましょう。話し合いに参加する人が多ければ多いほど、現状を多角的にみることができます。

次に地域の現存する問題について具体的に意見を出しあいましょう。それを共有するなかで中心的に解決しなければならない課題がみえてくるはずです。現存の課題を分析した後には、将来予想される問題についても考えていきます。現存の問題と将来予測される問題は分けて整理するのがよいでしょう。また、課題を考える中で、人口構成比や年代別の人口推移、医療費の推移、犯罪発生件数、失業率、中心部の空き店舗数の推移など客観的なデータでさらに現状を理解することができます。データ収集については行政の協力を求めて進めるのがよいでしょう。
ここまでの話し合いの過程で、さまざまな団体にも協力を得ながら実施すると新たな問題意識をもつ人材が加わる可能性があります。
ここから先は地域課題を踏まえて、どのような地域にしていきたいか、またどのようなクラブなら参加したいのか、それぞれの夢を語り共有していきます。

このように、時間はかかってもスポーツ関係者だけではなく、さまざまな人とじっくり話しあいをもつことが成功への鍵となります。クラブは一人ではできません。それぞれが役割や責任を分け合い設立を目指すものです。  
(大野登世   前山口県クラブ育成アドバイザー、元青年海外協力隊員)