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総合型地域スポーツクラブに関するお知らせ

総合型クラブ2007/07/20

メルマガ(第22号)連携ニュース 長期継続クラブにみるマネジメントの工夫  ~エフ・スポーツ(福島県福島市)の場合~

※本ニュースは本日配信の「総合型地域スポーツクラブ公式メールマガジン第22号」と連携した内容となっております。
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  旧市内を中心に活動するNPO法人エフ・スポーツは、平成13年4月に設立しました。ご多分に漏れず、クラブ設立から、会員数増加や様々な課題を経験し、それを乗り越え、この数年間、ようやく「自立」をしていく力を感じられるようになったところです。
  その成長の姿は、一個人の「自立」となぞらえることが出来るようです。
  「身辺的自立:生活の基本形態」    「経済的自立:自助自活」    「精神的自立:他者依存決別」    「社会的自立:自他認識」
この分類に沿って、早稲田大学スポーツ科学学術院作野誠一准教授が「スポーツにおける自立」の分類を示されています。これを参考に、エフ・スポーツにおける「クラブの自立」に置き換え、6年以上継続してきた要因を探ってみると、次のような点があげられます。

●身辺的自立    ~事務処理「分担」能力とクラブハウスの存在
  独自、独特な事業展開を実現できたのは、必ずしもクラブマネジャーひとりの力ではなく(もちろん功労者であることは間違いないのですが)、たとえば、各種助成事業の情報収集やその事業への提案(申請書の作成)、受託できた場合の事業報告など分担して乗り切ってきたことにあります。目には見えませんが、この自前の事務処理能力を蓄えてきたことこそ、今に続くたくましい活動展開へ繋がっています。このような体制が確立するまでにはいろいろな問題にぶつかりながら、試行錯誤の連続でした。それらすべてを把握し統率してきたのは、クラブマネジャーの存在です。そのため、クラブマネジャーとスタッフが事務局としてスムーズに機能できているのです。
  また、間借りしているクラブハウス(文末のメルマガ3号参照)は、どこかへ依存するわけでもなく役員同士が協力し、各所に交渉し獲得しました。一時は閉鎖の危機も経験しました。しかし、会員間、内外を問わず、クラブに関わる人がコミュニケーションのとれる空間、そして、ほぼ常時、誰でも出入りできる空間を、移転しても確保し続けました。それにより、先に述べた事務の分担や、活動の趣旨を伝え理解を求めるための場としても、またクラブの存在をイメージできる(可視化できる)場ともなり、クラブに関わる様々な人に理解を深めてもらうためには必要不可欠で、自立意思の表れと解することもできます。

●経済的自立    ~ねばり強く説明した「会費改定」
  当初、会費設定は、収支のバランスよりも「値頃感」によって設定していました。資金が足りなくなった場合、運営側の人間が持ち出して乗り切ろうという結束と、覚悟があったためできたことだったと振り返ることができます。しかし、実際、「自立」を目指すには、「このままではいけない」気持ちが当然のごとく存在し、事業における収支バランスの見極めも出来るようになり会費改定を断行しました。平成13年の設立当初は年会費3,000円でスタートしましたが、平成15年度には  5,000円、平成16年度7,000円、平成17年度からは年会費10,000円にまで段階的に変更しました。
ともかくも、エフ・スポーツの基本的な考え方を、特に会員に対してねばり強く説明し、あわせて会員としてのメリットをつくる努力を続けました。それでも、設立当初200名程度だった会員は、現在500名を越え、会費によって運営がまかなわれる見通しが持てるようになりました。

●精神的自立    ~体裁を気にせず修正しながら続ける
  行政を頼らず、行政にとらわれず、エフ・スポーツだからこそできた事業がありました。たとえば、米消費拡大事業や福祉医療機構による助成事業は、民間的で柔軟な発想がなければ対応できませんでした。立場が違う構成員がいることから、スポーツ領域だけではなく、様々な視点で捉えた独自のセンスが光る事業があります。様々な能力・スキルを持った人達を集めることが、クラブの継続・発展には重要なのかもしれません。
  設立当初より、4つのスポーツ少年団の指導者・代表者が設立準備委員会に入っていました。議論を積み重ねていくうちに会議の席で出た「とにかくカタチはどうでも良い、マズイところはやりながら直していけばいい」という意見がいまだに息づいており、「根本は、御上がやっているのではないお気軽なクラブ」(副理事長談)だそうです。

●社会的自立    ~人と人とのつながり、共感を得ての推進
  土地柄からか人と人とのつながりが強く、さらに言えば、人と情報がセットになっている場合が多くありました。たとえば、新たに指導者や施設を探す場合に誰かが情報を持っていて、これが事業展開に大きな効力を発揮していくのです。このようにクラブに関係した人が、外に向けて「鎖の輪」を繋いでいっている印象があります。これはエフ・スポーツの無形の財産とも言えるものです。「特別な人」が集まっているのではなく、年齢や立場に関わらず自由に意見を言い、持っている情報を惜しみなく出し合う雰囲気があるからこそ、このようなことができると思います。特に若い人の意見を受けとめ、やりたいことを実現させようとみんなでサポートします。会議以外の場でも「面白そうだね」「やってみよう!」という話をよくします。
困難も「勢い」で乗り越えてきました。まさに「若者」のなせるワザ。そうして、いろいろな事業を創出する力(人材、情報網)を習得してきましたが、その意志決定やアクションのスピードが早い分、事業スタートまでの期間内に後追いで、事業の趣旨の説明を各方面に重ねる必要がありました。もちろん、このプロセスがあったからこそ、多くの共感を得て活動を推進してきたことは間違いありません。

○まとめにかえて
  設立時から続く「トータルスポーツ」の指導者からは、「仕事では得られない楽しみを得ている実感」「居心地が良くて、ここに自分の居場所がある」と。おそらくは、地元民だからこそ、すべて自分の生活(=活動)に返ってくる感覚が、やりがいを生み、実感の持てる活動となっているようです。長く主体的に関わっている人こそ「ここに居場所がある」という気持ちが強く芽生え、クラブを支えているように思います。このように、エフ・スポーツは「地域のスポーツ振興」という揺るがない方向性を定め、関わってくれる人やその人のやりがいを大事にすることで強いクラブをつくり、それが長期継続の基盤になっていると思います。
  クラブにとってこの数年は基盤づくりの期間であり、多くは短期・中期的なスパンで活動してきました。おそらく、会員数がこのまま順調に増えていくにつれ、経営を考えると、改善を繰り返す体質はそのままに、単なる力任せではなく、長期的な計画をむしろ「これから」大切に設定していく必要があるかもしれません。そこに、さらなる安定経営の糸口が潜んでいるように感じます。

(林  隆弘  (株)TFP・地域スポーツ推進事業部部長/埼玉県広域スポーツセンター)