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総合型地域スポーツクラブに関するお知らせ

総合型クラブ2007/06/20

メルマガ(第21号)連携ニュース 「失敗に学ぶケース・スタディ」~一部の人の負担が大きく、クラブ運営にも支障が~

※本ニュースは本日配信の「総合型地域スポーツクラブ公式メールマガジン第21号」と連携した内容となっております。
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【質問】
設立から3年経つクラブです。設立当初は、クラブ関係者皆に熱意がありましたが、4年目を迎えてクラブとの関わり方に温度差がでています。会員数が300人未満で、専従スタッフを雇用できる財政基盤がなく、本業をもつ兼務スタッフばかりでまわしています。最近「仕事や家のことが忙しい」との理由で、業務が立ち行かなくなることが目立って増えてきました。役員は名誉職という位置づけで、実務はほとんど行いません。一部のスタッフの業務負担と責任ばかりが重くなり、疲れがでてきています。
これからどうしたらいいでしょうか?

【ケースの考え方】
クラブを立ち上げるということは、決して一人の力では成し遂げることはできず、多くの人々の手助けによって、初めてクラブは立ち上がる、と言っても過言ではありません。一方、実際にクラブの運営が始まると、クラブの運営に本格的に携われる人というのは、意外と少ないという現実もあります。クラブ運営が大変だと感じることの原因のひとつに、協力者が少ない、極端なことを言えばいつも決まった数名だけがその運営に携わっていて、過度な負担を強いられているということが問題となっています。クラブの設立時や設立当初だけでなく、運営に関しても多くの人々の手助けがなければクラブは発展していきません。クラブを設立してしまえば目標は達成した、ということではクラブを永続的に運営していくことは不可能です。

●根幹にかかわる業務はボランティアに任せない
  クラブ運営に関して携わる人が意外と少ないという理由の多くは、自らがなかなかクラブに携わる「時間がない」といったことがあげられます。当初はクラブを立ち上げるという素晴らしい目標に同感し、自らも何か手伝いたいといった気持で設立や当初の運営に携わる人も多いのですが、実際には自分自身の仕事や家庭の都合などにより、なかなかクラブに携わることができないといった現状があります。この問題の原因として考えられることは、クラブを手伝う人の多くがボランティアである、つまり自分が携わることのできる範囲内でのお手伝いしかできない、ということに起因すると考えます。
人手もお金も限られているクラブとしてはある程度、ボランティアに期待せざるを得ません。ですがボランティアの人々がお手伝いしていただける範囲も限られてきます。このギャップが、クラブとボランティアとの間の意識のずれを生じさせるのだと考えます。
このような問題を解決する方法として考えなければならないことは、まず、「クラブ運営の根幹に関わることまでボランティアに任せない」ということがあげられます(ここで言うボランティアとはクラブに賛同して部分的にお手伝いをしていただける人を指します。必ずしも無報酬というだけの概念ではありません)。運営の多くをボランティアに手伝ってもらうことはクラブにとってありがたいことですが、クラブ運営の根幹に関わることはクラブ内で責任のある人(主に理事長や理事などの役員や専従的にお手伝いのできる人。報酬の有無は問いません)を中心にその業務を行うことが望ましいでしょう。例えば、事業内容のことやお金のこと、対外的な対応等に関してはその責任を持って行動ができる人を中心に行うことが望ましいでしょう。

●運営のルールを作る、正当な報酬を与える
クラブ運営に関してのルールを作ることも必要です。「この人がいないと何も決められない」といったことでは迅速なクラブ運営に支障をきたします。たとえ責任者がいなくても、一定の事案の場合にはその運営がストップしないルール作りが必要です。例えば、決定事項のランク分けをし、各々の場合の責任者や決定方法などを決めておく、などの運営ルールを作ることが考えられます。このようなクラブ内での共通のルールがあれば、多くの実務上の意思決定がそのルールに則って行なわれることにより、迅速なクラブ運営が期待できます。但し、一定以上の重要事案についてもそのルールに則れば誰でも決めることができるということでは、クラブ自体の方向性や責任の所在がぶれてしまう恐れがあるので、やはり重要事項に関しての最終決定権を持つ人は、いつでもクラブの運営に携われる人を選任しておくほうがいいでしょう。
またワンステップ上の方法としては、その働きに対して正当な報酬を与えることができるようになると、クラブ運営も更に安定したものになります。正当な対価を与える=クラブ員・ボランティアにより一層の責任感が出てくる=クラブの運営の質が高くなる、といった好循環が期待できます。但し、これはクラブに報酬を払えるだけの財源が確保されて始めて成り立ちます。財源の確保、収支のバランスを考えるクラブ運営が求められます。

●組織のスリム化と外部の多様な人材活用
  クラブ運営には組織が必要です。ある一人の方の意思のみで運営されている、行き当たりばったりのクラブ運営では純粋に民意が反映されているクラブとは呼べません。基本的には運営を司る組織があり、多数決の原理でクラブ運営がされることが望まれます。但し、気をつけなければならないのは、この組織が大きくなりすぎると迅速なクラブ運営を阻害する恐れがあります。たとえば、会議を開催したいのに、出席者を集めることに多大なる苦労を強いられる場合(NPO法人格を取得しているクラブであれば、定款で総会や理事会の定足数も決まっており、定足数以下では会議は開催できないことになっています)や、クラブ運営陣に名前だけの方が多く、実際の運営にはほとんど顔を出さない場合など、運営に携わる人の頭数だけは揃っていても本当にクラブのために議論を尽くせる人が運営陣にどれだけいるのかにポイントを置かなければ何の意味を持たない組織(クラブ)となってしまいます。

  このようにクラブ内の役割を決めること(責任の明確化)、運営に関するルールを作ること(運営の透明化)、そして実のある組織をつくること(組織のスリム化)により、クラブ内での一人にかかる負担が軽減され、効率の良いクラブ運営となることができるのです。必要であれば外部の意見や専門家の意見を聞くこと(人材の多様化)も必要です。
そしてクラブ運営の根幹となる部分に関しては本当にこのクラブを永続的に発展させていきたいと思う志のある人々を運営陣とすることがクラブを永続的に運営させるためには必要となってくるのです。「名前だけで運営に無関心」「付き合いがあるから」といった理由だけで選ぶことは避けましょう。
(谷塚  哲  スポーツ法務事務所  行政書士)