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総合型地域スポーツクラブに関するお知らせ

総合型クラブ2006/10/20

メルマガ(第13号)「世界のスポーツ&クラブライフ (南アフリカ共和国編) ~アパルトヘイトを超えて広がるスポーツとクラブ~」

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世界のスポーツ&クラブライフ  (南アフリカ共和国編)  ~アパルトヘイトを超えて広がるスポーツとクラブ~

『アパルトヘイト(人種隔離政策)とスポーツの不幸な関係』
  次回2010年のサッカーワールドカップが開催されることになっている南アフリカ。長年にわたるアパルトヘイトにより、スポーツの世界でも国際社会から孤立していた。オリンピックでは1960年のローマ大会より締め出されており、アパルトヘイト廃止が決定的となって1992年のバルセロナ大会から復帰した。サッカーのワールドカップでも同様に、1976年より1992年まで参加が認められなかった。
  19世紀の後半に、イギリス人の入植者が中心となり、母国と同じようなサッカーやラグビーのクラブがつくられた。こうした背景があり、アフリカ大陸の中でもこれらの種目が非常に盛んな国として知られている。1994年に、初の全民族参加による選挙で選ばれたマンデラ大統領も学生時代にはサッカーをプレーし、その後ヘビー級のボクサーとしても活躍した。彼は大統領就任演説の数時間前まで、ザンビア対南アフリカのサッカーの試合を観戦していた程の大のスポーツファンである。

  しかしアパルトヘイト時代は、スポーツも人種、社会階級を分離するための、政治的な道具となっていたことも否めない。ラグビー、クリケットは、白人、中上流階級の人のスポーツ、サッカー、ボクシングなどは黒人、労働者階級のスポーツとはっきり色分けされていた。1995年にラグビーのワールドカップが南アフリカで開催され、優勝したホスト国の南アフリカチームに代表チームのジャージを着た、非白人であるマンデラ大統領から優勝カップが手渡された光景は、アパルトヘイト後の民族融和政策の象徴的な場面であった。なぜなら代表チームの愛称でジャージのエンブレムにもなっているスプリングボックはアパルトヘイトの象徴として黒人たちが忌み嫌っているものであった。アパルトヘイト政治の犠牲者として20年間以上も拘置されていたマンデラ大統領のこのパフォーマンスは、国をまとめるための彼の強い決意表明のように思えた。

『協会主導の一貫指導と普及』
  民主化後、サッカー協会は、その名の通り「融合政策(melting pot development)」として、子どもたちの基本的スキルの向上、民族を超えた交流を実現させようとして、多くのコーチングクリニックを開催している。ラグビーやクリケットの協会も同様の政策をとっており、特にかつて政府が黒人を強制的に居住させた地域(タウンシップ)での普及にターゲットを絞っている。
  1994年に「統一学校スポーツ協会」が設立され、今まで人種ごとにばらばらに運営されていた組織を一体化させ、スポーツを通して学校教育で、これまで疎外されていた黒人の子どもたちを学校に馴染ませ、コミュニティのモラルを高めようとしていることは特筆に値する。まだまだ、いろいろな障壁は高いものの、こうした競技団体、学校の努力が実を結びつつある。

  かつて黒人のコミュニティにとって殆ど無縁とも言って良いようなスポーツであったラグビーも、人口の80%以上を占める黒人の間にも近年爆発的に普及しており、州代表レベルには、数多くの黒人選手が輩出されるようになっている。以前でも国の代表チームで何人もの優秀な黒人選手がプレーしたが、国際社会からの矛先をかわすための手段であるとの批判もささやかれた。しかし現在は、純粋に多くの黒人選手がトップレベルにまで上り詰めている。これを実現させている背景は、グラスルーツレベルからトップまでの隙間のない協会によるサポート体制と、ヨーロッパ的な世代を超えた生涯スポーツを可能にする地域クラブの存在であるといえる。

  筆者が訪れたナタール州の首都ダーバンに本拠地を置くラグビーの世界最高峰リーグであるスーパー14に出場しているシャークスは、州代表チームを基盤とするプロチームである。その5万人強収容できるアブサ・スタジアムには、プロチームの運営事務所と、アマチュアのための協会事務所が併設されていた。プロチームをトップとするピラミッド型の構成が確立されている。学校だけでなく、コミュニティの象徴である地域クラブにも、人種の隔てなくメンバーの交流が自然と生まれたときに、真のスポーツ大国としての南アフリカの姿が現れるであろう。
(海老島  均    滋賀県クラブ育成アドバイザー)

 

併設されたプロチームと州ラグビー協会の受け付け
ラグビーの試合の後は駐車場でバーベキューが恒例
ハーフタイムを利用した地区の子どもたちの試合