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総合型地域スポーツクラブに関するお知らせ

総合型クラブ2006/06/30

メルマガ(第09号)連携ニュース「指定管理者制度・クラブの現状と課題(上)」

※本ニュースは本日配信の「総合型地域スポーツクラブ公式メールマガジン第09号」と連携した内容となっております。
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指定管理者制度・クラブの現状と課題 (上)  ~指定管理者制度とクラブ~

  平成15年、地方自治法の改正により、「指定管理者制度」が導入されました。導入後3年間で自治体は保有する公の施設を「自主運営」もしくは「指定管理者制度」のどちらかに移行しなければならず、平成18年度9月に一応の期限を迎えます。これにより指定管理者制度の導入を決定した自治体は、昨年度をピークに指定管理者を公募し、本年度4月1日から、指定した事業者に管理を代行するケースが多くなっています。民間からすれば一見するとビジネスチャンスとなりえる「指定管理者制度」ですが、まだ不透明な部分も多いように見受けられます。

*用語定義
「クラブ」=スポーツNPO、任意の団体すべて含む
「公の施設」=「住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設」(自治法244条)
  
●民間の期待と公共スポーツ施設の意味
  今までの公共スポーツ施設の多くは、直営か、自治体と関連をもつ団体などが管理・運営を委託されていました。指定管理者制度は、使用許可権も包含しうる管理権限を民間にも任せるというわけですから、民間からすれば大きなビジネスチャンスになろうかと思います。なぜなら、通常スポーツクラブの場合、土地や施設、管理運営費などの投資を必要としますが、指定管理者制度の場合、土地や施設は既存の公共施設を利用し、管理運営費が自治体から入り、収益に関しては自分達の利益(一部除く)になります。ビジネスを進めていく上で民間にとってこの上ない好条件となり、早くからこの制度に関心を示した企業やクラブも多かったのです。
  公共スポーツ施設の本来の目的は、地域住民のため公共施設でなければなりません。また、今までは使用料も安く、地域住民なら誰でも使えるというメリットがありました。今後、指定管理者制度が導入されても、この公共スポーツ施設の意味合いは変わることはありません。  
  しかし、この公共スポーツ施設の管理・運営が民間に任された場合、いかに公共性を保てるかという点が今後問題になってくると思います。公共サービスは誰にでも平等であるサービスだからこそ、今まで自治体の役目として税金が使用されていたわけです。この「平等」というキーワードが民間の管理代行になってどう変わってくるのか?  果たして、公共施設を民間に管理代行させることが本当に正解なのか?という点を、今後注目したいところです。
  料金設定に関しても問題がありそうです。地域住民にとっては利用料の値上げは嫌なものですが、指定管理者制度では、より良いものを提供してその対価として適正な料金を設定する考え方で、料金が上がる場合が多くみられます。地域住民の理解を得るまでには時間がかかりそうです。

●民間企業との競争
  大きなビジネスチャンスとして大手スポーツ関連会社などではプロジェクトチームを作って指定管理者制度に臨んだと聞いています。それでは、クラブとしては、どのような準備ができていたでしょうか?
クラブが指定管理者制度に勝ち抜くためには、実際に大手スポーツ関連会社などの民間企業と既存団体の両方に勝たなければなりません。指定管理者制度募集要項の参加資格条件には、「企業・NPO・任意の団体を問わず」となっています。地域的な制限(地元優先)をしたいところですが、自治体にも様々な理由がありそれはなかなかできないようです。そのため、自治体側もいろいろな意味で間口を広げて指定管理者制度の募集を行っています。逆の考え方をすれば、大手スポーツ関連会社や全国的に施設管理を事業としている企業などが一同に指定管理者募集に参加をしてきます。そうなった場合、はたしてクラブはそれらの強敵に対抗できるのでしょうか?
  スポーツ施設の管理運営には思いつくだけでも、グラウンドや体育館等の施設の管理、器具・用具の管理、警備、受付業務、予約業務等々、様々な業務があります。民間企業ではこれらを専門とする企業が指定管理者制度に応募してきます。スポーツ施設を管理・運営する会社、セキュリティー会社等です。一方クラブに目を向けると、グラウンド管理やセキュリティーを専門にやっているクラブはありません。クラブのほとんどはスポーツプログラムの提供を主に行っています。管理運営面で、専門である民間企業と競争してもなかなか勝てるものではありません。
  なかには、指定管理者に決まったら人を増やすと考えているクラブもあるようですが、指定管理者制度は、公募の段階で具体的な管理運営のプレゼンテーションを自治体側にアピールしていかなければなりません。既にノウハウと人材を持っている民間企業とこれから取り組もうとしているクラブとのプレゼンテーションの優劣は一目瞭然です。そういった意味でもクラブが指定管理者制度に勝つには相当の多種にわたるノウハウや人材、プレゼンテーションの方法までを含め完璧なものが要求されます。

●指定管理者制度の認識のズレ
  当初、地元住民のための公共スポーツ施設を地元住民のクラブが管理運営をする、これは理想の姿だと私は考えていました。指定管理者になりたい理由をいくつかのクラブに聞くと、収入や活動拠点確保のためという話をよく聞き、他のクラブも同じ考えだと思います。正直な話、指定管理者となるのに十分な体制を持ったクラブはまだ少ないと思います。
  指定管理者となるためには、少なくともクラブとして運営や財務、法務ができる人材をしっかり確保していることが望まれます。指定管理者になれば自らが運営し、お金の計算をし、トラブルなども自分達で対応していかなければなりません。指定管理料をオーバーしてしまえば自分達で実費を捻出することもあるのです。リスクを想定しそれに対応しうる人材の確保は重要な鍵となります。
  クラブの組織基盤もしっかりとしたものが求められます。指定管理者制度の提出資料にはクラブの成り立ちや実績・財務状況を証明する資料があります。「指定管理者制度=民間も含めた管理代行」であっても大元には自治体の存在があるため、「運営は始めてみたけど駄目だから撤退します」では許されません。自治体としては、しっかりと安定継続した運営を任せられる団体でなければ指定できないと考えるでしょう。「公共サービス=終わりのないサービス」です。「利益がないからやめます」「運営できないからやめます」では、公共サービスとは言えません。そのため、クラブの組織基盤は非常に重要な鍵となり、任意の団体よりは法人格の取得が望ましいと考えられています。
  現時点でクラブが抱く指定管理者制度と本来の意味の指定管理者制度に少なからずとも誤差が生じてきていると思います。本来の意味の指定管理者制度は行政の公共施設の「管理運営事業」の管理代行です。決してクラブの事務所・活動場所の確保ではないということです。

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スポーツ法務事務所  行政書士  谷塚  哲