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総合型地域スポーツクラブに関するお知らせ

総合型クラブ2006/05/22

メルマガ(第08号)連携ニュース「世界のスポーツ&クラブライフ」

※本ニュースは本日配信の「総合型地域スポーツクラブ公式メールマガジン第08号」と連携した内容となっております。
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世界のスポーツ&クラブ・ライフ(西オーストラリア(*注)編)
~“a” club から “our” club へ:  クラブ文化とメンバーの役割~

  オーストラリアは人口2000万人(東京都と神奈川県の合計人口に匹敵)ながら、国際レベルで活躍するスポーツ選手を数多く輩出している「スポーツ大国」です。その実力は、2004年のアテネオリンピックにおいて、米国、中国、ロシアに続き17個の金メダルを獲得したことからも伺えます。最新の調査(2002年に実施*参考HPを参照)によると、オーストラリア成人(18歳以上)の約2/3が、調査実施日から過去12ヶ月の間に、最低週に1度、何らかのスポーツ活動に参加しており、成人の約1/3が組織化された何らかのクラブに所属しています。
  クラブのほとんどは、単一種目・多世代・多レベル型ですが、町村区の範囲にほぼ一つの割合で、プールを含む多種目・多世代・多レベル型クラブが地方自治体によって運営されています。これらのクラブは、扱う種目、運営形態に違いはあるものの、「メンバーやコミュニティーと深く結びついている」という点で共通しており、ここに日本の総合型地域スポーツクラブが学ぶべきであろう姿を見ることができます。

  Wembley Downs Tennis Club (WDTC:ウェンブリー・ダウンズ・テニス・クラブ)は、西オーストラリア州の州都Perth(パース)の郊外にある単一種目・多世代・多レベル型テニス・クラブの一つです。幼児から80歳を超えるメンバー約550人がクラブを支えています。このクラブでは月刊の会報を各メンバーに配布していますが、その紙上にプレジデント(クラブの会長)からのメッセージとして、しばしば「クラブ文化」「メンバーの責任・役割」といった言葉が登場します。
  例えば、ケネディ大統領就任演説の一文を引用し “Ask not what WDTC can do for you but what you can do for WDTC”  (WDTCがあなたに何をしてくれるかではなく、あなたがWDTCに何ができるのかを問おうではないか)と、メンバーの役割や責任の重要性を訴えています。彼はまた、「コートの内外を問わず、メンバー同士が強く結びついた、家族のようなクラブ文化がWDTCの現在の成功を維持し、未来の成功を約束する唯一の手段だ」とも述べています。

  実際、WDTCでは、単にメンバーが集まってテニスを楽しむだけではなく、高い競技スキルを持つメンバーはクラブの代表として様々な試合で活躍し、経済的余裕のあるメンバーは金銭的な援助をし、特殊な技術(芝の管理など)を持つメンバーはその技術を積極的にクラブに提供しています。スキルも、お金も、技術も無いというメンバーは、クラブの大掃除や子供用の砂場作りなどに「時間」や「力」を提供し、メンバーとしての役割や責任を果たそうと努めています。このような姿勢は、時間とともに「クラブ文化」となり、いずれ「伝統」として幾世代にも渡って引き継がれていくことになっていきます。WDTCでも、世代を超えてテニスを楽しむメンバーの姿がこの「伝統」を物語っています。
  また、WDTCは「テニスを行う場所」としてだけでなく、「社交の場」としての役目も果たしています。ラケットの代わりにビール(クラブ運営のバーでアルコールも販売)を片手に仲間とテニス観戦、ウェアからドレスに着替えダンス・パーティー、他にもクイズ・ナイトやビンゴ・ゲーム大会など、怪我のためプレーできないメンバーや、高齢になり現役を退いたメンバーも生涯にわたってクラブ・ライフを楽しむ機会が用意されています。

  読者の中には「WDTCは成功例の一つ、特別な例の紹介」と思われる方もあるでしょうが、WDTCは決して「特別なクラブ」ではありません。西オーストラリアに点在するどのクラブを取り上げても、必ずそのクラブ独特の「文化」を持ち、メンバーがクラブ運営に深く関わりながら、様々な運営努力や工夫を凝らしていることに気付かされます。
もちろん、日本とはクラブを取り巻く環境も、メンバーの生活パターンも全く異なりますから、WDTCのようなクラブ運営をそのまま真似しようとするのは無理でしょう。しかし、「クラブ文化を最重要視する姿勢」、「受身ではなく能動的にクラブ活動に参加するメンバーの姿勢」は、日本における総合型地域スポーツクラブ運営を成功に導く鍵となるといっても過言ではないでしょう。そのためにも、総合型地域スポーツクラブ運営関係者の「クラブ文化」を作り上げようとする強い意志とリーダーシップは不可欠です。ここオーストラリアでは、今日も “a” clubから“our”  clubへ変えようとするリーダー達の挑戦が続いています。

(野坂 薫  Edith Cowan University)

【*注】西オーストラリア州は、日本の約20倍の面積を持つオーストラリア国土全体の西部約33%(日本の面積の約7倍)を占める当国最大州で、人口は約200万人(2005年6月時点)、アジアの国々とも関係が深く、日本は西オーストラリア州最大の貿易相手国です。州都のパースは地中海性気候で過ごしやすく、1日あたりの平均日照時間は年間を通して8時間と、オーストラリアの中で最も太陽に恵まれています。冬の間はほぼ毎日雨が降りますが1日中降り続けることはなく、人々は「夏のクリケット」「冬のフッティー(オーストラリアン・フットボール)」など季節に合わせて通年スポーツを楽しんでいます。

【参考HP】
http://abs.gov.au  (Australian Bureau of Statistics:スポーツ実施率、クラブ加入率当、オーストラリアの様々な統計情報)
http://www.ausport.gov.au/  (Australian Sports Commission:クラブ設立・運営情報から国際レベルの選手育成まで、オーストラリアの最新スポーツ情報)

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