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総合型地域スポーツクラブに関するお知らせ

総合型クラブ2006/02/20

メルマガ(第05号)連携ニュース「世界のスポーツ&クラブライフ」

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世界のスポーツ&クラブライフ(アイルランド編)
~学校クラブと地域クラブが共存する国~

  北海道とほぼ同じ面積に人口390万人ほどの小国、アイルランド共和国。しかし、スポーツに関しては大国と言えるほど、とてもスポーツ盛んな土地柄である。2002年の日韓共催FIFAワールドカップで決勝トーナメント進出と陽気なサポーターで一躍脚光を浴びたサッカーは、現在アイルランドで最も人気のあるスポーツの一つと言えるであろう。その他にもラグビー、伝統スポーツであるゲーリック・ゲームなど多くの人気スポーツがある。
  アイリッシュ・スポーツ・カウンシルにそれぞれのスポーツ種目の競技人口を調べに行ったことがある。そこで対応してくれた事務局長からは「チーム数ならわかるけど、競技人口はまとめたことがない」とつれない答えが返ってきた。複数のクラブに所属している人や、様々な競技を掛け持ちしている人が多いので、競技人口が一番多いスポーツは何かなどと言う統計は意味がないとのことであった。スポーツが社会生活の一部であるという状況がそこには存在する。

  アイルランドの子どもたちは、学校で様々なスポーツの課外活動を経験する。そして地域クラブでもスポーツを楽しむことができる。学校クラブと地域クラブが上手く共存しているのがアイルランドの特徴であるといえる。
  私がラグビーをコーチしていた中学校の生徒の一人は、学校ではラグビーと陸上の代表選手、地域のクラブではテニスの14歳以下のクラブ代表選手であった。「土曜日にラグビーとテニスの試合を午前と午後に掛け持ちですることもあるよ」と誇らしげに語っていた。子どもたちはこのような形でいろいろな種目に親しみ成長していく。学校のクラブも地域のクラブも練習及び試合が週2日程度なので組み合わせが可能なのである。
  また練習に来ないから試合に出場させないと言う論理はこの国に存在しない。スポーツ=試合を楽しむもの、という図式があるため、できるだけ多くのメンバーを試合に出そうと努力する。またそれだけの施設もあるのもうらやましい点である。
  
  大人になると、今度はスポーツが「社交」の中心的役割を果たす。いろいろなスポーツのクラブハウスは、会社帰りの人や近所の住人でにぎわい、人々の交流を生み出す。特に夏場は日が長い(夜10時ぐらいまで明るい)こともあり、会社帰りにゴルフのワンラウンド、テニスのトーナメントなどという我が国からみたら夢のような生活パターンが存在する。ウィークデーでも夜遅くまでクラブハウスでグラス片手に盛り上がるアイルランドの人たちのタフさには脱帽する。
  子どもの時から様々なスポーツに楽しむ利点は、体の全体的発育にも理想的だし、成人してからの様々な社交生活に生かす「資源」をも獲得しているわけである。「楽しみ」を最大限に追求したアイリッシュのスポーツライフは、トップからレクリエーションレベルまで理想的なスポーツのあり方を演出していると言えよう。
(海老島 均  滋賀県クラブ育成アドバイザー)

  *詳しくは、海老島均・山下理恵子著『アイルランドを知るための60章』(明石書店,2004年)をお読みください。海老島氏は、1992-93、1997-2001年、アイルランドに研究者として在住していました。

 

テニスクラブのクラブハウスにてメンバーと談笑
コーチをしていた学校でのラグビー練習試合(レフリーは筆者)
クラブハウスでのパーティ風景