特別企画 国民体育大会改革のいま―オリンピック競技種目の新規導入について

第2部 


国体へのアスリートの想い

~女子レスリング・吉田沙保里選手インタビュー~
 

待ちに待った女子レスリングの導入

スポーツ界の活性化に期待したい

 国体未実施のオリンピック競技種目が、今後国体に導入されていくことについて、トップアスリートはどう思っているのか。パート1の松丸喜一郎氏の話にも登場した、女子レスリングの吉田沙保里選手にお話を伺った。女子レスリングは、現状のところ国体未実施。長崎国体でイベント事業として行われ、2年後の岩手国体での正式導入を目指している。 (取材協力:至学館大学)




いつかは私も国体に

 私の国体のイメージというと、日本全国からあらゆる競技種目のアスリートが集まる日本最大の総合大会である、ということ。都道府県別の対抗戦というのも、おもしろいなと、ずっと思っていました。

 実は、国体に関してはこんな思い出があります。
 国体のレスリング競技には男子種目しかありませんから、私は当然、出たことがありません。父も2人の兄も国体出場経験があり、なんと母はテニスで国体に出ています。家族で国体に出ていないのは私だけなんですね。
 
 今年の3月に父が亡くなりましたが、その直前に、たまたまこんな話をしました。「私には、子どものころの地域の大会からそれこそオリンピックまで、いろんなメダルがあるけれど、国体のはないんやなぁ」って。なんだか、とても寂しく思いましたし、出場経験がある家族をうらやましく感じました。そのときのことは、いまでも印象に残っています。


 そんななかで、国体に女子レスリングが導入される方向で進んでいるというニュースは、私にとってももちろんですが、レスリングに取り組む女子選手たちにとって、とても大きな朗報です。父とそんな会話を交わしたこともあってか、将来、女子レスリングが正式種目となって私に参加資格ができたら、ぜひとも国体に参加して優勝したい。そう強く思っています。


 女子レスリングだけでなく、国体では今後、女子種目を中心に、オリンピック競技種目を国体に導入していく流れだと伺っています。実は私は、オリンピック競技種目で国体未実施のものがいくつもあるとは知りませんでした。


 でもそのなかには、人気競技種目もあるし、日本が世界的に強いものもあります。そういった競技種目が国体に正式導入になれば、日本でももっと人気が出て競技人口が増えるかもしれません。何より、国体で初めてその競技種目を見た子どもたちが、興味をもって取り組み始めてくれれば、普及の大きな後押しになります。また、選手たちも地域を代表して切磋琢磨しますから、競技レベルの向上につながり、さらにいっそう、世界で戦う人材が増えてくるかもしれません。


 そういった点では、たとえば女子レスリングの場合、階級の問題やそもそもの競技人口の少なさ、地域的な偏りなどの問題があったからこれまでは導入されなかったと伺っていますが、日本のスポーツ界としてはとてももったいなかったと思います。いずれにしろ、今回の新規競技種目の導入が、日本のスポーツ界をいま以上に活発にして、もっともっと日本が元気になるきっかけになるとうれしいです。


(写真提供:日本レスリング協会)

地域の方と触れあい
レスリングをもっと紹介したい

 新規競技種目は再来年の岩手国体から順次導入と伺っていますが、女子レスリングも、いち早くラインアップに入ってほしいし、できる限りの協力は惜しまないつもりです。
 
 今年の長崎国体では、導入に先駆けてイベント事業としてエキシビションマッチなどが行われますが、私も仲間とともにそれに参加し、「ちびっこレスリング教室」などをお手伝いさせていただきます。子どもたちがレスリングを体験するなんてこと、なかなかできないですよね。だから体験教室を通して、レスリングの楽しさを精一杯アピールしようと、いまから意気込んでいます(笑)。

 私たちがお手伝いすることで、大会もその地域も、そして競技としても盛り上がってくれるのなら、とてもうれしいことです。長崎県内からだけでなく、ぜひ一人でも多くの方に会場にお越しいただければと思います。
 

 そもそも、レスリングの大会は東京で行われることが多く、競技が盛んな地域も限定的です。ですから、日本中でより広く親しまれるためには、私たちから皆さんがレスリングに触れる機会をつくるということも大切だと思っていました。これまでの国体も、状況が許す限り顔を出すようにしていましたが、今回の長崎に限らず、来年の和歌山、そして正式導入が期待される岩手にも、ぜひ伺いたい。そして、一人でも多くの方々と触れあい、レスリングに触れてもらいたいと思います。

 スポーツは時に厳しいけれど、やっぱり楽しい。私はレスリングが大好きです。女子レスリングに限ったことではありませんが、私たちアスリートも頑張ります。ですから、ぜひ皆さんももっともっといろんなスポーツに触れ、スポーツを楽しんで応援していただければと思います。




国体から世界へ羽ばたく
選手の登場に期待



談話:日本レスリング協会 菅 芳松事務局長

 オリンピック競技種目の国体への導入により、女子レスリングも再来年の岩手国体からの実施を目指しています。女子レスリングが国体競技種目になるということは、すべてのレスリング関係者にとって、とてもうれしいことです。
 
 レスリングは、オリンピックで多くのメダルを獲得してきたことなどから、とくに女子については、吉田沙保里や伊調馨、浜口京子などの人気選手も多く、これまでも多くの方々が応援してくださいました。しかし一方で、それはオリンピック前後の期間に限られ、国内的には、残念ながらまだまだ人気競技とはいえません。誰もが簡単に見たり体験したりできるというわけではなく、競技人口が少ないといったこともその一因なのでしょう。

 
 しかし、国体にラインアップされれば、当然、各地域・都道府県の方がレスリングを目にしたり、選手たちと触れあう機会も増え、競技そのものや選手たちの認知度が、いま以上に上がることは間違いありません。また、世界で活躍中の、あるいは世界で活躍した選手たちが国体に参加すれば、地域の方々にもきっと喜んでいただけるはずです。そうなれば、レスリングの魅力を、もっともっと多くの方々に知っていただくことができるはずです。そして、それをきっかけにレスリングをやってみようと思う子どもたちも増えてくれるかもしれません。競技の普及にとって、その意味は計り知れないのです。

 
 もし競技がより普及すれば、2次的効果として、人材の発掘などもいま以上に取り組みやすくなります。何より、国体は都道府県対抗で、天皇杯・皇后杯獲得のためにポイントを競いあうという形態ですので、女子レスリングも当然、各都道府県でも選手の発掘・育成や強化を図ることになるでしょう。私たちも、都道府県協会を通じて、発掘・育成・強化のシステムをつくって成果を出せるよう努力しなければならないと思っています。本取り組みにより、今後、競技のすそ野が広がるだけでなく、全国津々浦々で広くきめ細やかな発掘・育成・強化が図られることになるのです。


 それはそのまま、日本全体としての競技レベルが上がることにつながります。将来的に、世界のトップで活躍できる第2・第3の吉田選手らが登場する期待もいっそう膨らみます。各地域から国体へ、そして国体から世界の舞台へ―。そんなキャリアがレスリングのサクセスロードになる日を、いまかいまかと心待ちにしています。

国体改革への取り組み

このページの先頭へ▲