体育・スポーツにおける性的指向・性自認(SOGI)に関する社会的動向スポーツにおける性的指向をめぐる問題(ホモフォビア等)4 スポーツ領域、特に男性のスポーツ領域における同性愛嫌悪(ホモフォビア)は根深く、深刻な問題を孕んでいます。 2013年、アメリカのプロバスケットボールリーグ(NBA)のジェイソン・コリンズ選手がアメリカ4大スポーツの現役選手として初めてゲイであることを公表して話題になりました。それまでは、アメリカのメジャースポーツで同性愛をカミングアウトしたアスリートは誰もいなかったのです。 オリンピックの競泳で5つの金メダルを獲得したイアン・ソープ選手(豪)は、引退後の2014年に自らがゲイであることを明らかにしました。インタビューにおいて彼は、「オーストラリアがゲイのチャンピオンを望むかどうか、不安に思う自分がいた」とコメントしています。また彼は、何年間もうつ病で闘病し、自殺を考えたこともあったと告白しています。それほど、スポーツの世界は、同性愛者などのSOGIに関する権利が認められていない人々が、精神的な負担を感じるような、居心地の悪い空間であったといえます。 それでも、2021年の東京2020大会では、LGBTQ+であることを公表したアスリートが少なくとも186人、パリ2024大会では193人にのぼりました。この数字は、リオデジャネイロ2016大会における56人の3倍以上です。このように、近年、同性愛・両性愛であることをカミングアウトするアスリートは増えてきています。 しかし、日本の現状に目を転じてみると、東京2020大会とパリ2024大会でLGBTQ+であることを公表したのべ379名のうち、日本のアスリートは一人もいませんでした。また、公認スポーツ指導者約1万人に対して行った調査によれば、72%の指導者が、身の周りに当事者が「いない・いなかった」と答えています(大勝ほか,2019)。日本においては、現在でも、当事者の存在が不可視化されているといえます。 東京2020大会では、ゲイであることを公表したトーマス・デーリー選手(英)が男子10mシンクロ高飛込で金メダルを獲得し、競技後、LGBTQ+の若者たちにポジティブなメッセージを発しました。彼のように、自らの力を存分に発揮するLGBTQ+アスリートの活躍が見受けられるようになりました。「多様性と調和」のビジョンが掲げられた東京2020大会でしたが、今後も、スポーツに関わる人たちが性の多様性を知り、お互いを認め合い、個性・才能を存分に発揮できるようなスポーツ環境を作り上げていきたいものです。13
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