スポーツリスクマネジメントの実践 ― スポーツ事故の防止と法的責任 ―
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39 1 リスクマネジメント体制構築のポイント (1)責任体制の明確化 クラブ運営者は、「クラブ全体のリスクマネジメントを推進するための責任者」と「現場(種目ごと)でリスクマネジメントを実践するための責任者」を決める必要があります。当然ながら、事故発生時についても、クラブ全体の責任者と、現場の責任者が主体的に動くことになります。 責任者が曖昧になっている場合、リスクマネジメントの推進については日常業務が優先されるため後回しにされやすくなり、事故発生時の対応については当事者の勝手な判断で場当たり的な誤った対応が行われる可能性があります。 (2)事故対応マニュアルの作成 作成にあたって、日常的な事故防止に向けた取組みと、事故発生時の対応の2つを盛り込むことが一般的です。 日常的な事故防止については、①活動前のチェックポイント、②リスク事例の記録、③種目ごとの注意すべき事項、が必要事項です。①活動前のチェックポイントについては、「施設用具の管理」「健康管理・身体能力の管理」「自然条件の把握」の3点となります。詳細は前章を参考にしてみてください。 事故発生時に行わなければならない対応は、①ケガ人に応急手当、②組織的な対応、③記録、の3つです。 (3)緊急連絡網の作成 応急処置や救急搬送を終えたあと、関係者への速やかな連絡が必要です。会員の連絡先はもちろんのこと、クラブの代表者などの連絡先を記した緊急連絡網を作成しておく必要があります。 (4)損害保険への加入 会員が加入している保険の内容把握、掛け漏れが無いかの確認、保険申請をする際に必要な個人情報の確認などが必要です。 なお第1章の重複になりますが、保険には大きく分けて賠償責任保険と傷害保険の2つがあります。 賠償責任保険とは、会員がケガをしたことがクラブまたは指導者の「法律上の」損害賠償責任によるものであった場合に支払われるものです。注意点は、法律上の損害賠償責任がある場合に支払われること、加入している保険によって支払いの上限が設定されていることです。 傷害保険とは、会員がケガをした場合、通院1回で、または入院1日ごとに保険契約で定められた定額が支払われるものです。注意点は、かかった治療費がまかなわれるものではないということです。 クラブが加入している保険は、賠償責任保険なのか、傷害保険なのか、また事故が発生したときに、支払われる金額(保険金)はいくらまでなのかを確認しておきましょう。 (5)救急箱の設置 事故が発生した場合に最低限の処置が行えるよう、救急箱の準備が必要です。併せて誰もいないときでもすぐに使えるよう、分かりやすい場所に置いておくことが必要です。 また大会やイベントなどが行われるとき

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