スポーツリスクマネジメントの実践 ― スポーツ事故の防止と法的責任 ―
37/112

33 3 自然条件の把握 (1)雷の⾳が聞こえたらすぐに活動を停止する 頭上では晴れていても落雷事故は起きます。雷の聞こえる範囲は約10kmと言われています。雷鳴が聞こえている場合、頭上では既に放電が始まっています。雷鳴が聞こえたら屋内などの安全な場所で待機するとともに、雷鳴が止んでも20分は落雷の危険がありますので、屋外での活動は控えなければなりません。 【事例】 1996年8月、高校1年のサッカー部員だったAさんは、Bが主催する大会で落雷を受けた。2か月後に意識を取り戻したが、視力を失い、下半身麻痺。 高裁は部活動での学校側の安全配慮義務を指摘(2008年9月)。二審では「試合前には雨がやんで空も明るくなってきていたので、落雷事故は予測できなかった」と判断されたが、高裁では、平均的なスポーツ指導者ならば「黒く固まった暗雲が立ち込め、雷鳴が聞こえ、雲の間で放電が起きるのが目撃されていたら、落雷の危険性が迫っていると予見することは可能」と指摘。 賠償総額は遅延損害金を含め約5億円。高校が3億4,000万円、Bが約8,000万円を負担(2009年6月)した。Bは資産整理(破産)で捻出した。 (2)熱中症への適切な措置を⾏う 熱中症は夏はもちろんのこと、冬でも体温の上昇と脱水によって発生する可能性があります。また屋内、屋外ともに発生する可能性があります。 予防は激しいプレーを避ける、こまめに水分を取ることです。スポーツドリンクがおいしいと感じるときが危険の目安です。応急処置のポイントは全身を冷やすことです。 熱中症の予防と、発生したときの応急処置方法を指導者は身につけておきましょう。 ・ 雷が鳴ったら屋内に、鳴りやんでも20分は屋外には出ない ・ 熱中症に注意する ・ 冬季活動時の十分な準備運動を行う

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です