スポーツリスクマネジメントの実践 ― スポーツ事故の防止と法的責任 ―
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32 揃えることが必要です。 サッカーについては衝突や転倒などへの対処ができず、また柔道については受け身ができず、大きなケガに繋がることがあります。 【事例①】 2005年10月、A市の少年野球チームの総監督Bは、試合に負けた罰としてC君ら選手に投げ込みやダッシュなどを課した。 C君は練習開始、3時間後に倒れ、翌日死亡。死因は熱中症。 民事責任について、Bが過失を認めて謝罪、賠償金約5,000万円で和解(2007年10月)。 刑事責任について、Bは日没後の熱中症は予想できなかった、部員の判断で自由に給水が許されていた等の理由から不起訴処分(2009年1月)。 【事例②】 2000年11月、A県立高校の当時高校1年生のB君は高校空手道選手権大会予選に出場。3回戦で対戦相手の突きを顔に受け、脳幹部外傷性くも膜下出血などで倒れた。一命を取り留めたが、手足に障がいが残った。 これに対して両親は、技が未熟なまま大会に出場させた学校側に責任があるとして、県を相手取り損害賠償を請求。空手部に入部するまで空手の経験がなく、約4カ月の練習で大会に出場させたのは安全配慮義務違反にあたると主張。 A県は450万円を支払うことで和解(2004年3月)。 【事例③】 2008年5月、柔道教室において当時小学6年生のA君が、指導者Bとの乱取り稽古の際、畳の上に投げられた直後に頭を打ち、一時意識不明の重体となった。急性硬膜下血腫のため。A君は意識障がいの後遺症も残った。 2001年3月、A君に約2億3,000万円、両親に各550万円を支払うよう元指導者Bに命じる判決。(2011年9月に総額2億8,000万円の和解が成立) 危険を伴うスポーツの指導者として、頭部への直接打撃がなくても、重篤な結果が生じることは認識し得るとして、事故の予見可能性があったと判断された。 指導者Bは業務上過失傷害の疑いで起訴され、現在も係争中。

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