スポーツリスクマネジメントの実践 ― スポーツ事故の防止と法的責任 ―
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24 2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。 【⺠法第697条】(事務管理) 義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない。 2 管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。 【⺠法第698条】(緊急事務管理) 管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。 【⺠法第700条】 (管理者による事務管理の継続) 管理者は、本人又はその相続人若しくは法定代理人が管理をすることができるに至るまで、事務管理を継続しなければならない。ただし、事務管理の継続が本人の意思に反し、又は本人に不利であることが明らかであるときは、この限りでない。 6 責任が問われなかった事例 次に示す事例は、水泳部のトレーニング中に死亡したことによる損害賠償請求に関するものですが、最終的には責任が問われず、損害賠償請求が棄却された事例です。 しかし事故発生から最終的な判決がでるまで、多くの時間を費やしています。事故は起こさない、ということが最も重要であることは言うまでもありません。 【事例】 2006年3月、A大学の水泳部2年のAさんが中国・昆明での高地トレーニング中に死亡(50m潜水2本を終えた直後にけいれん、意識失い3時間後に死亡確認) 2008年2月、高地トレーニングや潜水は危険性が高いにも係わらず、①十分な体調管理を行わなかった、②AED携行など救助体制の整備を怠った、③適切な心肺蘇生を行わなかったとして、大学とコーチを相手取り、約9,500万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴。 2011年7月、①コーチは十分な睡眠や栄養、水分を取るよう伝え、脈拍測定、血液検査も実施、Aさんは異常なしと判断されていた、②Aさんは高地トレーニングの経験者で体調管理能力を十分に備えていた、として安全配慮義務違反はなかったと、請求を棄却した。

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