スポーツリスクマネジメントの実践 ― スポーツ事故の防止と法的責任 ―
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22 義務とは予見に基づいて結果の発生を回避しなければならないという義務です。これらを果たすことができなかった場合には、責任を問われることになります。 (2)⺠法715条 クラブとして責任を負うということは、民法715条にある使用者責任による損害賠償に基づいています。すなわち、損害賠償請求があった場合、個人では支払い能力に限度があるため、使用者が代わって支払いを行うというものです。 このため状況に応じて使用者が支払った分を当事者に請求することは可能です。これは求償といわれるものです。 (参考) 【⺠法709条】(不法⾏為による損害賠償) 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 【⺠法715条】(使用者等の責任) ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずるべきであったときは、この限りでない 2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。 3 第二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。 4 責任の範囲 クラブの責任範囲は、「管理下にある」となります。すなわち、集合から解散までです。自宅から練習会場や試合会場(集合場所)まで、または練習会場や試合会場(集合場所)から自宅に帰るまでの事故は、基本的にはクラブの責任とはなりません。 但し、小学生の会員をいつもの練習会場ではなく、試合会場からの帰り道が遠いにも係わらず一人で帰してしまい、その道中に事故に遭った場合には、注意義務を怠ったとしてクラブが責任を問われることもあります。 【ケーススタディ①】 クラブに所属する小学⽣が練習会場に向かう途中、近隣の住宅に落書きなどの悪戯を⾏った場合 クラブの管理下にはありません。従ってクラブには基本的に法的責任は生じません。行為を行った小学生に責任が生じることになります(実際には保護者の責任となります)。但し、会員がクラブのユニフォームを着て上記の行為を行った場合、クラブにクレームが入ることもあります。地域で活動している以上、謝罪やクラブに所属する会員への注意喚起など、クラブとして道義的な責任を果たす必要はあると考えます。

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