スポーツリスクマネジメントの実践 ― スポーツ事故の防止と法的責任 ―
24/112

20 の可能性があるならば、それを回避しなければならないという義務です。 スポーツを行うことで起こり得るあらゆる重大な事故の想定に対して可能な限りの事故防止などの対応が求められます。 また事故発生後の対応についても同様です。すぐ救急車を呼ぶ、AEDを使用するなど、迅速な対応を行うことが求められます。 ③保護監督義務 指導者は会員の健康状態やスポーツを行うためのスキルを有しているかなどを把握して、最適な指導を行う必要があります。これが保護監督義務です。具体的には持病の有無、健康状態、年齢、更には競技を行うスキルが十分かどうかを把握することです。 これらを敢えて把握しない、または把握していたにも関わらず対処しなかった場合にも保護監督義務違反が問われることもあります。 ④保護者への通知義務 指導者は事故の状況から、後に何らかの被害が生じる可能性がある場合、保護者に事故の状況を説明して、保護者による対応措置を行ってもらうことを要請しなければならないという義務です。 特に頭を打った場合には極めて重要です。時間が経ってから症状が出るためです。例えば練習中に会員が頭を打ち、この事実を家族が知らなかった場合、家に帰った後に、気持ち悪い、吐いたという症状が出たとしても、家族はその理由が分からないため、頭を打ったことに対する処置ができないからです。 (2)クラブに課せられる安全配慮義務 「予測できる危険の排除」と「指導者に注意義務を守らせる」の2つを安全配慮義務といいます。 安全配慮義務とはクラブに求められる義務です。この2つの何れかの義務が果たされていなかった場合、クラブの責任が問われます。 但し、安全配慮義務違反が問われるのは、クラブが法人となっている(法人格を有している)場合です。 法人格を有していない場合、法律的にはクラブが責任を負うことができないため、指導者等の個人が責任を負うことになります。 ①予測できる危険の排除 ケガが発生しやすい施設や設備の構造や、ケガに繋がる可能性のある破損を把握して、「修理する」「使用しない」「近づかせない」の何れかの対応をとることです。 特に危険個所に「近づかせない」ことについては、誰もが明確に危険な状況が分かる状態にしておかなければなりません。 ②指導者に注意義務を守らせる 指導者が果たすべき4つの注意義務を守らせることです。リスクマネジメントに関するマニュアルを策定して、指導者に対する研修の実施を通じて内容の周知徹底を図り、指導に反映してもらうことが、クラブに対して求められている義務です。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です