スポーツリスクマネジメントの実践 ― スポーツ事故の防止と法的責任 ―
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18 第2章 スポーツ事故発⽣時の法的責任 事故が発生した場合、民事責任や刑事責任を、指導者等の個人またはクラブが問われることになります。 民事責任とは治療費や慰謝料などの損害賠償金の支払いです。刑事責任とは、過失傷害(刑法第209条)、過失致死(刑法第210条)、業務上過失致死傷(刑法第211条)など、刑法における処分です。 一般的には指導ミスによるケガに対しては民事責任が問われます。しかし、意識不明の重体や死亡など重大な結果となった場合は刑事責任も問われるケースがあります。 なお、道義的責任というものもあります。これには法的根拠はなく、事故が起きたときの誠意という位置づけのものです。事故が起きたとき、指導者やクラブの過失を事故当事者と話し合う前に、感情的な議論を避ける意味でも、お見舞いなど、謝罪や誠意を果たすことも必要です。 【刑事責任が発⽣した事例①】 2011年5月、当時高校1年の生徒が倒れてきた野球の練習用ゲージで頭を打ち死亡。 同校の硬式野球部の監督、助監督を業務上過失致死容疑で、2013年5月に書類送検。 事故前から強風で複数回倒れていたにも関わらず、安全対策を怠ったことが、理由。 【刑事責任が発⽣した事例②】 2008年、柔道の練習中、指導者が当時小6の生徒に片襟体落としをかけ、頭を強く揺さぶり、急性硬膜下血腫となった。この結果、全身まひの後遺症が残った。 頭を強く打っていないという理由で2度、嫌疑不十分になったが、検察審議会は「基本技以外の技をかけ重大な結果になり得ると知り得た」として、2013年5月、強制起訴の議決を行った。 (参考) 【刑法209条】(過失傷害) 過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。 2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 【刑法第210条】(過失致死) 過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。 【刑法第211条】(業務上過失致死傷等) 業務上必要な注意を怠り、よって人を本章のポイント ケガの程度が軽微な場合、一般的には民事責任(損害賠償責任)が問われます。 ケガの程度が重大(死亡、後遺障害等)な場合、民事責任と刑事責任の両方のケースが問われることもあります。 事故を予想しなかった、または事故が予想できたのに対処しなかったなどの場合、責任が問われます。 クラブに法人格がない場合、民事責任は個人が問われます。 集合から解散(管理下)までが、クラブの責任です。

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