スポーツリスクマネジメントの実践 ― スポーツ事故の防止と法的責任 ―
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16 コラム① スポーツ活動中の事故やケガは自己責任 スポーツ活動中には事故やケガはつきもの。そう考える人は少なくないかと思います。時には激しいぶつかり合いがあるのもスポーツの醍醐味。またトレーニング中には大きな負荷が体にかかることもあります。スポーツに使う用具だってその使用方法を誤れば、時には凶器になることもあり、グラウンドや施設にも事故やケガにつながる要因が多々あります。このように一つひとつを考えてみるとスポーツをすることは決して安全ではないことに気付くはずです。いつ、どんなタイミングで、どんな要因で事故やケガが起こるかは誰にも予測がつかないものなのです。 しかしだからと言って、いつでもスポーツ活動中に事故やケガが起こってよいものではありません。そんなに事故やケガが起こるならば、スポーツなんてしないほうが良い、なんてことになっては本末転倒です。それこそスポーツの発展の妨げに繋がってしまいます。ですから私たちは、事故やケガが起こりやすいスポーツ活動中に、いかに事故やケガを起こさないか、という重大な使命を背負っているのです。 一般的な社会のルールでは、他人にケガを負わせたならば、その責任を問われることが当たり前です。もし他人の足を蹴って怪我をさせたなら、その責任を負わなければなりません。しかしスポーツ活動中に限っては、この一般的な社会のルールが適応されないことがあります。もし事故や怪我が起こりやすいスポーツに一般社会のルールが全て適応されるならば、スポーツをやりにくく感じることもあるでしょう。ですからスポーツ活動中の事故やケガの責任に関してはある一定のルールが存在するのです。 「スポーツ活動中には常に事故やケガが起こりやすいもの」であるため、そのスポーツに参加する参加者はスポーツ活動中のこれらのリスクを承知(理解)して参加していると一般的には考えられています。ですから、自らそのリスクを承知(理解)して参加しているならば、そのスポーツのルールに則った上で起こった事故やケガの責任は原則「自己責任」と考えることが基本原則なのです。この基本原則があるからこそ、私たちがスポーツ活動中の事故やケガの責任に関して、あまり過敏に意識することなく、スポーツを楽しむことができるのです。 ですが全ての責任が自己責任で解決されるわけではありません。時にはその責任を問われることもあります。特に事故やケガが起こるだろう要因が、誰が見ても明らかであり、また気付いていたにも関わらず、その対処をすることも無かったなどのことが明白である場合には、その責任を問われることも十分あるのです。 スポーツ活動中の事故やケガは原則自己責任。けれども明らかに事故やケガが起こりうる可能性があるならば、可能な限りその事故やケガを防止するための努力をしなければなりません。無論、誰の責任云々の前に、まずは事故やケガを起こさない環境を作っていくことが最も重要なことなのです。

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