スポーツリスクマネジメントの実践 ― スポーツ事故の防止と法的責任 ―
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15 場合、または保険契約で定められた上限を超えた賠償責任が発生した場合には、保険金が支払われない、または一部の保険金しか支払われないこともあります。ちなみに自動車運転中の自動車事故により同乗者がケガをした場合は、試合会場に移動中の場合であっても、自動車保険での補償となりますので、注意してください。 傷害保険とは、会員がケガをした場合、通院1回で、または入院1日ごとに保険契約で定められた定額が支払われるものです。注意点は、かかった治療費が賄われるわけではありません。こちらは「法律上の」という条件ではなく、契約している保険会社によって、その条件は異なります。 保険をかけるときの掛け金を「保険料」といい、事故が発生した場合に保険会社から支払われるものを「保険金」といいます。また事故が発生した場合の保険金の上限を「支払い限度額」といいます。 この3つのキーワードを中心に、クラブとしてどのような保険を付けているのか、その条件をよく確認しておく必要があります。 保険を掛けず、クラブの自己資金または指導者の自己資金で対応することを保有といいます。もっとも損害賠償金が大きくなった場合、必要な資金を全て賄うことができないこともあるため、望ましい対応とはいえません。 (3)リスクマネジメントの推進 リスクマネジメントを推進するためには担当を決める必要があります。担当者はヒヤリハット事例の収集、マニュアルの整備、教育、研修のプログラムの策定について、計画的に取組まなければなりません。取組みが後回しにならないようにするためです。 ①ヒヤリハット事例の収集 クラブは事故事例だけではなく、ヒヤリハット事例も収集することが必要です。たまたま事故に至らなかっただけかもしれないからです。 また、より多くの事例を知るため、自らのクラブの事例だけではなく、他クラブの事例も積極的に収集しましょう。 ②マニュアルを作る 危機発生時に迅速な対応を行うことができるように、また対応の抜け漏れが生じないように、マニュアルを作成することが必要です。 巻末の付録の雛型を参考に作成してみてください。この雛形をベースに関係者間で議論を重ねたうえで、クラブの実態にあったマニュアルを作成しましょう。コピーしてそのまま使った場合、クラブの実態に合わず、結果、使われなくなることもある為です。 ③研修を⾏う マニュアル内容や事故事例を共有化するため、その内容を指導者などのクラブ関係者に周知して注意を促さなければなりません。 もっとも、指導者は平日の日中、仕事を持っている人が多いので、計画的に教育、研修を進めましょう。

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