スポーツリスクマネジメントの実践 ― スポーツ事故の防止と法的責任 ―
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14 ③リスクへの対応 抽出した重大なリスクを中心に対応します。対応策は4つ、回避、予防、損害の低減、リスクの分離があります。これらをあわせてリスクコントロールといいます。 ・回避(やらない、やめる) 具体的には天候不良のため中止する、十分なスキルがないため実施させない、または試合に参加させない、といった対応になります。実施しなければ事故は起きません。責任者の決断力が求められる対応です。 ・予防(事故を起こりにくくする) 施設や用具に不備はないか、会員の健康状態は良好か、スポーツを行うための天候は良好か、などの確認で事故を予防します。 ・損害の低減(事故が起きたとしてもケガを小さくする) 高度なスキルが求められるスポーツにおいて、施設や用具を簡単なものに変える、またはルールを簡単にすることで、スキルが十分ではない会員でも競技を楽しむことができるようにするための対応です。 例えば野球の場合では硬式ボールをビニールボールに代えてプレーする、またはテニスの場合は柔らかいボールで行うことで、仮にボールが体に当たったとしてもケガをしないようにするための対応です。 ・リスクの分離(バックアップや2重化) チーム力が低下しないようにバックアップ人材を強化する、クラブ運営に支障をきたさないよう個人のスキルに頼った業務をなくす、会員情報の消失を防ぐためデータのバックアップを行うなど、クラブを継続的に運営するための対応です。 ④対応の検証 マニュアルを作ったとしても使われていない、内容を誰も知らないのでは効果的ではありません。またリスクマネジメントに対する時間や費用をかけ過ぎていても効率的ではありません。例えば1年毎に、これまでの取組みが十分だったのかを検証して、マニュアルを直すなどの取組みが重要です。 (2)損害保険 事故が発生したときの治療費や慰謝料の支払いに関する資金手当てを、リスクファイナンシングといいます。その一つの手段が損害保険です。損害保険には大きく分けて賠償責任保険と傷害保険の2つがあります。 賠償責任保険とは、会員のケガの原因がクラブまたは指導者に「法律上の」損害賠償責任が発生した場合に支払われるものです。注意点は、法律上の損害賠償責任がある場合に支払われること、加入している保険によって支払いの上限が設定されていることです。つまり法律上の責任がなかった 損害保険には賠償責任保険と傷害保険の2つがあります。 指導ミス等で会員がケガをした場合に出る保険は賠償責任保険です。 保険には支払い限度額や出ない場合もあります。条件の確認が必要です。

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