スポーツリスクマネジメントの実践 ― スポーツ事故の防止と法的責任 ―
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9 1 リスクマネジメントの必要性 リスクマネジメントとは、事故の発生を予防するための対応(事前対応)と、事故が発生したとき最悪の状況に至らないための対応(事後対応)のことを併せていいます。リスク管理ともいいます。 危機管理とは事後対応のことをいいますが、リスクマネジメントと同じ意味で使われることもあります。 スポーツにはケガが付きものとは言いますが、意識不明の重体や死亡に至るような事故は起こしてはいけません。このような事故は指導者がリスクマネジメントの意識を持っていれば防ぐことができます。 このため総合型地域スポーツクラブに関わるクラブマネジャー、監督、指導者など、すべての関係者はリスクマネジメントの知識を身につけて、実践しなければなりません。 そのためのポイントは4つです。1つ目は事故事例を出来るだけ多く知りましょう、2つ目は「まぁ、いいか」をなくしましょう、3つ目は事故発生時には最悪を想定した行動をとりましょう、そして4つ目は治療費や慰謝料の支払いに備えて保険をかけることです。 ①事故事例を出来るだけ多く知る 事故を防止するためには前もって対処する必要があります。そのためには、どのような事故が起きるのかを予測できなければなりません。このためには事故事例を出来るだけ多く知ることが必要です。 ②「まぁ、いいか」をなくす 指導中、「今日は参加者が多いなぁ」「ちょっと空が暗くなっているかなぁ」「試合に出すのはまだ早いかなぁ」「近すぎでぶつかりそうだなぁ」と思うことがあるかと思います。このとき、「まぁ、いいか」と何も対処せず、そのままにすることが多いのではないでしょうか。 迷った時、気になった時は一旦、練習や試合を止めて確認してみましょう。 ③事故発⽣時には最悪を想定した⾏動をとる 「救急車を呼ぶのが遅れた」「AEDがどこにあるか分からなかった」など、事故発生後の対応が悪かったために意識不明の重体や死亡に至ることもあります。 このために必要なことが「最悪を想定すること」です。悪い状況に陥ったとき、「たぶん大丈夫だろう」と楽観的に考えがちです。事故が発生したとき、敢えて最悪を想定し、これを前提とした対応を行うことを心掛けることが必要です。 ④治療費や慰謝料の⽀払いに備えて保険をかける 指導ミスによる治療費や慰謝料の請求に備えた保険は賠償責任保険です(傷害保険ではありません)。 いくらまで支払われるのか、払われないケースは何かを確認したうえで保険に加入することが必要です。

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