スポーツリスクマネジメントの実践 ― スポーツ事故の防止と法的責任 ―
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21 2 法人格の有無によるクラブの責任 事故が起きた場合、クラブが法人格を持っていればクラブとして責任をとることができます。持っていなければクラブ代表者や指導者個人が責任をとることになります。 クラブには、法人格がある(NPO法人、公益社団法人、公益財団法人など)、任意団体である(法人格はない)、権利能力(人格)なき社団(法人格はないが、準じるもの)の3つの形態があります。 法人格がある場合、事故が起きたときにはクラブにも安全配慮義務違反を問うことができます。 法人格を持っていない形態を任意団体といいます。法律上の組織とはみなされないため、クラブとしても責任をとることができません。このため事故が起きた場合の責任はクラブ代表者や、指導者個人のみとなります。 法人格を持つ団体と任意団体の中間的な組織形態もあります。これが「権利能力なき社団」または「人格なき社団」です。個人の集合体という位置づけであり、町内会などがこれに該当します。クラブが組織として見なされるため、クラブとして責任をとることができます。但し、この形態として認められるには、「団体としての組織を備えていること」「多数決による意思決定が行われていること」「構成員が変更しても団体として存続すること」「規約などがある」の4つの条件を満たすことが必要です。 3 注意義務と安全配慮義務の法的根拠 注意義務は民法709条の不法行為による損害賠償に基づいており、安全配慮義務は民法715条の使用者などの責任に基づいています。 (1)⺠法709条 事故が発生した場合、基本的には当事者が責任を負うことになります。これは民法709条にある不法行為による損害賠償に基づいています。 民法709条には「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と書かれています。 故意とは、自分の行為が他人に損害を及ぼすことを知っていながら、行為に及ぶことです。これには「確定的故意」と「未必の故意」の2種類があります。 確定的故意とは意思を持ってケガをさせる行為です。一言でいうと「わざと」です。未必の故意とは、ケガをさせる意思はないが結果的にケガしても構わないと思い行為に及ぶことです。何れの場合においても、行為に及んだ者は責任を取らなければなりません。 過失には予見義務と回避義務があります。予見義務とは、管理者は損害の発生を予見しなければならないという義務です。回避

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